人間関係をスムーズにするための基本は、言うべきときに言うべき言葉をはっきり相手に伝えることである。
それがとくに、感謝の言葉ならなおさらで、自分の気持ちを相手にはっきりとわかるように伝えることがたいせつだ。
ところが、最近はどうも「ありがとう」のひと言がいえない若者が増えてきているように感じる。
そう思わせるこんなできごとがあった。
ある真夏の暑い日、私の前をひとりの女性が歩いていた。
彼女はハンカチで汗をふきながら歩いていたのだが、汗をふき終わって、ハンカチをハンドバッグにしまおうとしたときに、何かのはずみで、ハソカチは道路に落ちてしまった。
すぐ後ろを歩いていた私が、ハンカチを拾って彼女に渡したところ、彼女の口から出た言葉は、「ありがとう」ではなく、なんと「えーっ! うっそー!」だった。
そして、軽く頭を下げるや、黙って私の手からハンカチを取り上げた。
この女性がたとえ私にたいして感謝の気持ちを感じたとしても、「えーっ! うっそー!」では、その気持ちは私には伝わらない。
通りすがりの人が相手なら、感謝の気持ちが伝わらなくても、とくにこの女性にとって不都合はないかもしれないが、会社ではそうはいかない。
植野瞬